おかべのこと

おかべ。

 

そう、豆腐である。

 

僕には好きなおかべがいくつかあって、おかべについては結構うるさい。世の中には名前は同じなのに全然違うものというのもまた結構あって、もしかしたらほとんどのものがそうだと言えるのかも知れないが、おかべはその最たるものだと思っている。例えば、コーヒーはドリップしたものとインスタントでは大きく味がことなるし、店によっても全く違う。おかべもそういう類のものだと思っているのだ。

 

僕が好きなおかべはまずは木綿であるということ。ボロボロと固めの田舎豆腐のようなものよりは、水分をたっぷり含んだ柔らかな食感のものが良い。それでいて、豆の香りと味がしっかりと感じられるもの。かと言って、絹ごしではいけない。お皿にのせると直立はできずぐにゃっと曲がって頑張って立っているような姿になるもの、ちょっと目を離すと水がでてきて醤油のかけ直しが必要になるような、そんなおかべが良い。こういったおかべは、湯豆腐やお味噌汁にしても角の辺りがとろっと溶ける感じでとても美味だ。

 

湯之元の誇る 山路のおかべ(豆腐)

湯之元で昔から豆腐を作っている山路商店。

 

山路商店の豆腐は、僕が豆腐に求める条件をすべて満たしている。僕の記憶違いでなければ昔は田舎豆腐のような食感だった気がするが、10年程外に出て帰ってきたら好みの豆腐になっていた。やはり一番好きなのは冷ややっこで、一丁くらいはペロッと食べてしまう。ネギやおかか、茗荷に生姜、いろいろと楽しめる冷ややっこだが、中でも目がないのは大葉をちぎってのせたものだ。大葉は包丁で小さく刻んだものよりも、ちぎってのせるくらいが香りがたっておいしい気がするし、手にのこる香りも好きだ。これに合わせる醤油にも大好きなのがあって、サクラカネヨの直売所で買い求める「生醤油」でと決めている。この醤油は甘くなく、醤油自体も豆の香りが感じられるし、おかべの豆の香りとも相まって何とも相性が良い。

 

 

そんな山路のおかべは、蓬莱館やこけけ直売所で冷蔵庫にならべて売られているのだけど、朝行くと、おかべもあげもまだほのかに温かく、店員さんに「温かいので別にしておきますね」と袋を分けられることもある。大葉も一緒に買い求められし、サクラカネヨは隣町だが、蓬莱館からは車で5分ほどだ。

 

他所から帰って、小さな幸せを身近なところでいくつも見つけたけれど、山路の豆腐もそんなことの一つだ。

 

追伸

長文となってしまったので、厚揚げや薄揚げについてはまたの機会にゆずりたいと思うが、最後にひとつ、余計なお世話かもしれないけれど、山路のおかべは良心的すぎる値段のように思われ、「キズあり」と記載されたものなどは利益がでているのか?と他人事ながら心配になってしまう。「良いものは高いのだ」、これが常識であるはずだけど、特に地方にはその常識を外れたものが結構転がっている。僕は山路のおかべをずっと食べたいし、優れているとも思うから、もちょっと高く売っても良いのにとも思う。おかべにうるさい僕は、おかべについて勝手にあれやこれやと考えていていろいろな心配までしてしまう。

 

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